2011年3月2日水曜日

日用品 アジアへ「船出」 縮む国内 欧米列強に挑む

 国内日用品業界が新興国を中心に海外進出を競う「大航海時代」に突入している。各社ともこれまで内需への依存度が高かったが、デフレの長期化と人口減で頭打ちになっている国内市場にとどまっていてはじり貧を免れないためだ。ただ海外では米P&Gや英ユニリーバなど先行する欧米日用品大手が大きく立ちはだかる。海外市場で勝ち残らなければ成長は望めないだけに、各社とも現地企業と提携して拡販を図るなど欧米勢の牙城切り崩しに懸命だ。(中村智隆)

 ◆インドネシアに拠点

 マンダムは2日、インドとアラブ首長国連邦、サウジアラビアなど中東の日用品市場に参入する方向で検討していることを明らかにした。現在、インドの有力な卸会社と組み、インド、中東で主力の整髪剤やひげそり用クリームを試験販売するなど市場調査を進めている。

 マンダムはインドネシアに生産?販売拠点を持ち、女性用を含む同国の整髪剤市場では7?8割の高いシェアを握る。今後は同国を橋頭堡(きょうとうほ)にマレーシアやタイなど周辺国への浸透を図り、さらに進出地域も拡大したい考えだ。同社では「インドや中東では男性のひげが濃く、まずはひげそり関連商品の需要が期待できる。また日本よりも近くて安く商品をつくれるインドネシアから輸出すれば価格競争にも勝ち抜ける」とみている。

 ライオンも現在、タイ、マレーシア、中国、韓国などアジア8カ国?地域に進出しているが、「周辺地域への進出も視野に入れている」(小林達訓?国際事業本部統括部長)とアジア進出を加速する構えだ。ライオンと同様にアジア8カ国?地域に進出する花王もインド、ブラジル、ロシア市場への参入に向け市場動向を調査している。

 生活必需品が多く不況に強いとされる日用品業界でも、国内市場ではデフレのダメージが及んでおり、激しい価格競争で収益力は低下する一方だ。「低価格のプライベートブランド(PB、自主企画)商品が台頭してきている」(花王)ことも逆風となっている。花王の2010年3月期連結決算は売上高が前年同期比7.2%減、営業利益が同2.9%減、最終利益が37.2%減と大幅な減収減益になった。人口が減り続ける国内市場では今後も市場の縮小が避けられない見通しだ。

 ◆高まる購買力

 このため、各社とも国内に偏った収益構造からの脱却に乗り出している。花王は売上高に占める海外比率を現在の約25%から20年には50%以上に、ライオンも現在の約14%から将来的に約30%にそれぞれ引き上げる計画だ。ユニ?チャームは紙おむつや生理用品の世界シェアを今年度中に約7%から約10%に伸ばすことを目指している。

 各社が特に有望視しているのがアジアの新興国市場。IMF(国際通貨基金)によると、10年の実質経済成長率の見通しは中国が10.0%、インドが8.8%、インドネシアが6.0%などとアジア新興国が軒並み日本(1.9%)を大きく上回る。各国とも経済発展に伴って消費者の購買力が高まっているほか、日本から近い地の利も魅力だ。

 しかし、アジア市場では欧米勢が圧倒的なブランド力で高い知名度を確立している。ある日用品業界関係者によると、「P&Gやユニリーバ、米コルゲートといった欧米大手がシェアの7?8割を占め、残る2?3割を日本や現地のメーカーなどが奪い合っている」というのが現状だ。

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 ■武器は開発力 販売網カギ

 欧米勢は1980年代から、仏流通大手、カルフールや香港に拠点を置くドラッグストアチェーンのワトソンズと組んでアジアに幅広い販売網を構築し、商品を大量に投入してきた。

 大きく出遅れた日本勢は、強みである商品開発力の高さを武器に、巻き返しを狙う考えだ。花王では「日本は消費者の目が厳しく、商品に信頼がないと買ってもらえない。その市場で支持を得た日本メーカーの商品は欧米メーカーにとっては脅威だ」(幹部)と自信をみせる。

 ただ、アジア市場で持続的な成長を確実にするためには、欧米勢に負けない販売網を築き、いかにブランドを浸透させるかがカギを握る。

 ライオンは進出地域の現地企業と提携して販路の拡大や市場動向の調査に取り組んでいる。韓国では2004年に食品?医薬品事業を手がける「CJ」と合弁で日用品製造?販売会社を設立。CJを通じて韓国消費者の嗜好(しこう)を把握し、06年にドラム式洗濯機用の洗剤を他社に先駆けて投入した。

 それ以降、この分野では常に市場をリードし、トップシェアを誇る。他分野も好調で、09年の韓国での販売は前年比11%増加した。小林達訓?国際事業本部統括部長は「ライオンのビジネスモデルが受け入れられている」と強調する。

 花王は昨年10月にブランドロゴを漢字表記の「花王」からアルファベット表記の「kao」に変更。さらに進出地域に社員を派遣して現地の小売業者に売り場づくりの提案をするなど現地への同化に躍起だ。

 国内市場にどっぷりつかった泰平の眠りから覚め大海原に漕(こ)ぎ出した日本勢。欧米勢に伍(ご)して勝負できれば、世界的メーカーに飛躍する道が開けるかもしれない。

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 ◆値下げ圧力?原料高 板挟み

 国内日用品業界は、製品価格の下落という「川下」のデフレと、原料高という「川上」のインフレの板挟みになっている。

 3月の消費者物価指数(CPI、2005年=100、生鮮食品を除く)は前年同月比1.2%下落。このうち日用品は洗剤などの「家具?家事用品」が5.3%下落し13カ月連続、歯磨きやシャンプーなどを含む「諸雑費」が0.3%下落して15カ月連続のマイナスになった。

 消費低迷により、小売りの現場では低価格志向の強い顧客をつなぎ止めるために激しい価格競争を繰り広げており、日用品メーカーに対する値下げ圧力は弱まりそうにない。

 一方、原油高を受け、石油化学製品の基礎原料であるナフサ(粗製ガソリン)の国内価格は10年1?3月期に、09年10?12月期に比べ1キロリットル当たり5200円(12%)高い4万7700円まで上昇した。前年同期に比べると、77%高い水準で、4?6月期にはさらに5万円程度まで上がる見込み。このため、化学大手各社は石化製品の値上げを打ち出す方針だ。

 石化製品は幅広い日用品の原料として使用されており、値上げは日用品メーカーにとってコスト負担の増大に直結する。しかし、川下の値下げ圧力が増す中で、負担増を製品価格に転嫁するのは難しく、簡単には原料の値上げを受け入れられないのが実情だ。

 日銀は4月30日、11年度の消費者物価指数がプラスに転じると予測を上方修正したが、景気回復の足取りは弱く、デフレ脱却への道筋は不透明。一方で新興国の需要増はとどまるところを知らず、原料高が収束する気配はみえない。日用品メーカーにとっても、さらに収益がむしばまれる懸念が強まりそうだ。

引用元:パーフェクトワールド(Perfect World) 専門サイト

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